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2024年11月21日
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思考と速度

2010年03月20日

ローカル線に乗る、ということがあった。目的地までは1時間30分。

行き先のことしか頭にない普段の移動とは違って、1時間30分という時間は「通過する者」としての意識を大いにもたらす結果となった、ように思う。
「通過する」とは言うまでもなく、土地をなぞっていくということ。その意識の現れ方には、ローカル線の速度も当然関与しているだろう。
出発地から到着地まで切り取り線のように頭の中にあった地図が、実際土地を通過することで、鮮明な記憶となって残されてゆく。車窓からの景色は名も判然としない見たこともない土地であり、もしかしたらこの先も通過する以外に何の結び付きもない土地なのかもしれない。しかし、眼前に現れる山、田畑、家々、古びた看板や積み上げられた木材、そしてそこを歩く人、といった景色は確かに存在する土地の一端であり、地図上で記憶される名とは遥かに違う場所にある、厳然たる土地なのである。
おそらく、新幹線のような速度であったならあまりにも速くて、車窓からの景色を把握しないまま通り過ぎていたであろう。その意味でローカル線の速度は、「通過する者」としての意識を旨い具合に運んでくれた。
速度からもたらされる思考や認識の変化、が確かに存在していたのだ。

(一方井)
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